2019年11月3日日曜日

YCSJ ジャッジ対応ガイド ― (1)メンバー編

YCSJ ジャッジ対応ガイド ― (1)メンバー編



 注意 


本記事における全ての内容は、全て管理人の経験と独断に基く内容です。
決して公式の見解では無い事をご了承の上ご確認頂く様お願い申し上げます。


この記事の目的


こちらの記事では、YCSJ でのジャッジ対応において、チームメンバーが押さえておくべきポイントを記載して参ります。
当日のジャッジ対応については、最低限の指示は出ているかと思いますが、自主的に判断し、自発的に行動する事も強く求められます。

これらの思考と行動は、本来であれば各自がジャッジ経験を通して学び、蓄積されていくべきものである事は確かです。
しかしながら、YCSJ の様に多くのジャッジが必要となるイベントにおいて、そこで対応する全員が等しく十分な経験値を積んでいるという状況は現実的には無理な話でしょう。

その様な経験の少ないチームメンバーが、どの様に考え・動く事ができれば、チーム(リーダーと他のメンバー)、ひいてはイベント全体の助けになるのか、そして彼らのレベルアップに繋がるのかを、私の経験を基に説明致します。



ジャッジ対応時の基本動作


まずは、ジャッジ対応時の基本的な動きに関して説明致します。
今回対応される方の中には「ジャッジ対応が初めて」というインストラクターもいらっしゃるかと思います。
ある程度はチームの他の方からも聞く事になるかとは思いますが、ここでは私が普段そういった初対応するインストラクターに説明している内容をまとめておきます。



イベントが始まる前に


実際にイベントが始まる(=入場開始)迄に抑えておきたいポイントがあります。
それは「場所の把握」です。

おそらく、ジャッジ対応を行う上で、参加者から最も多い質問は場所・時間についての質問です。
  • ○○はどこに行けばよいか?
  • △△はいつから始まるか?
これらの質問を受けた際にスムーズに答えられる様、YCSJ では最低限以下の場所については説明できる準備が必要です。
(イベントによっては最寄りのお手洗いや喫煙所を訊かれる事もありますが、YCSJ では珍しい様に思います)
  1. ジャッジステーション(対戦結果の報告先)
  2. 次の集合時間の掲示場所
  3. インフォメーションエリア
  4. デュエルセットの受け取り場所
上記を踏まえた上で、『あちらにある○○に行って下さい。』『次の集合時間はあちらに掲示してあるので、それ迄に戻って来れば問題ございません。試合開始時に席にいない場合は、敗北扱いになってしまいますのでご注意下さい。』等の説明が行える様になると良いでしょう。
途中棄権(いわゆるドロップ)について尋ねられた際にも、『席にいないとどうなるか』を説明するに留めておくのがベターです。

その他、YCSJ に限った話ではありませんが、イベントのルールや規定は必ず目を通しておきましょう。
「参加者が知り得る情報は、全てジャッジも知っている」状態が望ましいです。



試合時間中の基本


ジャッジ対応の活動時間において、間違いなく最も長い時間を占めるのが「試合時間中、特にジャッジとして呼ばれていない時」です。
この時、私達ジャッジのやる事は会場の見回りであり、即ち「どこかでジャッジが必要になった時、素早く対応できる準備」です。
(極端な話、私はいつも『ジャッジって何するの?』と訊かれた時には『試合会場をウロウロする仕事だよ』と答えています。勿論冗談ですが)

YCSJ の様に広い会場でのジャッジ対応時には、通常は割り振られたエリアを担当して見回りを行う事になるでしょう。
(イベントが進行し、対戦エリアが狭くなってくるとこの限りではありません)

その時に抑えて欲しいポイントは以下の通りです。
  1. なるべく視野を広く持つ
  2. 他のメンバーの立ち位置を確認し、ムラが生まれない様な移動を心掛ける
  3. イベントの妨げとなる要素は素早く排除する
  4. 参加者が呼びやすい存在になる
  5. 腕組みをしない・後ろで手を組まない(「休め」のポーズはしない)
『特に大事なのは〇番です』って言いたかったのですが、どれも大事な事なので、もう少し細かく説明します。


まず 1 「なるべく視野を広く持つ」ですが、これはジャッジの基本中の基本です。
私達もプレイヤーですので、対戦が気になるのはわかりますが、一箇所に注意を向けるとジャッジを呼ぶ声に気付きにくくなるので控えましょう。
不正や遅延の疑い等、どうしても注視すべき対戦がある場合は、折を見てチーム内で情報を共有した上で張り付く様にすると、あなたが抜けた穴を他のメンバーがカバーしやすくなります。

敢えて意識を向ける場所があるとすれば、フィールドの状況よりも、対戦者同士の会話やカードテキストを確認する際の動きです。
慣れてくれば一定の精度で「ジャッジが呼ばれる気配」を察知し、先回りしてその付近へ移動できる様にもなります。

とは言え、YCSJ の様な広い会場ではそれは難しいので、一旦は「1 テーブルに集中しない」と言うポイントを押さえていれば大丈夫です。


続いて 2 「他のメンバーの立ち位置を確認し、ムラが生まれない様な移動を心掛ける」ですが、これについてもジャッジが呼ばれた際に素早く対応できる様にする為です。
例えば、自分が担当している隣のエリアでジャッジが呼ばれ、そこでメンバーが対応している際は、そのエリアのジャッジ密度は一時的に下がってしまいます。
その様な状況になった時は、手薄になった場所をカバーできる様に位置を調整する等、臨機応変に「チーム全体として」エリアに満遍なくジャッジが存在する様に意識すると良いでしょう。


続く 3 「イベントの妨げとなる要素は素早く排除する」については、最も抽象的なポイントですが、最も重要なポイントでもあります。
具体的に「イベントの妨げとなる要素」とは、以下の様な要素を指します。
  • しまわれていない椅子や、通路にはみ出した荷物等、「交通の邪魔」になる物
  • 対戦終了後に自席に戻らず立ったり歩き回ったりしている「視界の邪魔」になる人
これらは、どちらも「ジャッジが呼ばれた際に素早く対応する事」の妨げになります。
椅子に関しては移動しながらしまっていく、荷物については持ち主に「足元での管理をお願いします」と声を掛ける等、自発的に行動していきましょう。
※2019 年の YCSJ から、参加者の荷物は椅子の下で管理される施策も取られています。

特に自席に戻らない人は会場が広い YCSJ にとっては致命的であり、ジャッジのメンバー以上に全体を見渡す事を求められているチームリーダーからすると「視界を遮り、死角を生む存在」となってしまいます。
当然ながら、座った状態で手を挙げる=ジャッジを呼ぶ参加者よりも、立っている参加者の方が視界に占める面積が大きくなります。
ジャッジ側も多人数で見渡す事で、立っている参加者の陰にジャッジを呼ぶ参加者が隠れるリスクを減らせはしますが、その様な参加者を見掛けた時には積極的に注意していきましょう。
悪質な場合にはチームリーダーに相談すると良いでしょう。


4・5 については本質的には同じ「対応中の態度」になります。
ジャッジは出番が無い事が一番ですが(大会の理想は「ジャッジの必要が無い」事だと思っています)、それでも何か起きた際には「ジャッジを呼ばない」よりは「ジャッジを呼ぶ」状態にあるべきです。
その為のジャッジが、参加者にとって「呼び辛い」「呼びたくない」では本末転倒です。
常に呼びやすいジャッジでいて下さい。
イベントが進んでくると疲労がたまり、余裕がなくなってきますが、極力笑顔を心掛けると良いでしょう。

特に 5 「腕組みをしない・後ろで手を組まない」は無意識の内にやってしまう人も多いのですが、必ずやめましょう。
インストラクターとしては、と言うよりは人前に立つ存在としての常識です。


以上が、ジャッジ対応時の「呼ばれていない時」の基本です。
少し長くなってしまいましたが、次の項ではジャッジとして呼ばれた時の動きを説明致します。



ジャッジとして呼ばれた時は


おそらく多くの人が「ジャッジ」と聞いて思い浮かべる、「ジャッジとして呼ばれた時」について説明致します。
参加者がジャッジを呼び、問題を解決する迄の流れは、大きく分けて以下の様になります。
  1. 参加者に解決できない事象が発生し、ジャッジが呼ばれる
  2. ジャッジが駆けつける
  3. 参加者が状況を説明する
  4. ジャッジが回答を行う
  5. 状況が解決し、再びゲームが進行する
この流れのそれぞれで、ジャッジが意識すべきポイントを記載していきます。


1. 参加者に解決できない事象が発生し、ジャッジが呼ばれる
ジャッジが呼ばれている事に気付いた場合は、軽く手をあげましょう。
これは、参加者・他のジャッジ双方に「自分が対応に行きます」と言う事をアピールする為です。
YCSJ では会場が広いので難しいかもしれませんが、近くであれば『今伺います。』と一言参加者にアピールする事も大切です。
“ジャッジを呼んでいるのに誰も反応しない”と言うのは参加者の不満に繋がる大きなポイントなので、必ず避けましょう。


2. ジャッジが駆けつける
ジャッジを呼んだ参加者の元に辿り着いたら、『お待たせしました、どうなさいましたか?』等と発し、「これから状況を聞きます」と言う姿勢を見せましょう。
場合によっては自分が到着したのと反対に座る対戦相手の側に回らなければいけないかもしれません。
その場合でも一言伝えましょう。


3. 参加者が状況を説明する
参加者が今起きている問題を説明します。
場合によっては、参加者はそのターンやフェイズで起きた一連の状況を順に説明します。
言うなれば発生中の問題を「ストーリー」として説明します。(それ自体は正しい事です)
この時は一度自分の頭で整理し、「ストーリー」を「シチュエーション」に分解してから『つまり、今は○○という状況で△△となっている認識でよろしいですか?』と自分の言葉で“両方のプレイヤーに”確認を取りましょう。
質問には状況解決に必要の無い情報も多分に含まれています。
自分の理解の不明瞭な部分を 0 にする事は、誤回答・ミスジャッジを防ぐだけでなく、チームリーダやヘッドジャッジに状況説明する際にもスムーズにやり取りできる様になります。

また、このタイミングで必ず確認して欲しいポイントが 2 点あります。
それは、「質問されている事が今起きているのか、これから起きる事なのか」と「お互いにこれ以上チェーンは無いか」です。
『未だ起きていない事は回答できない』と言うのは基本ですが、いざジャッジ対応を行うと意外と確認できないものです。
状況を一通り把握したら落ち着いて、『これは既に発動済みですか?』『お互いにこれ以上チェーンはありませんか?』と確認しましょう。
『未だ発動していない処理についてはアドバイスになる可能性がございますので、お答えできません。』
『一度発動して頂き、実際の処理が行われるタイミングでご質問頂ければ回答致します。この時、発動が不適切なカードについては戻す様に指示します。』
等の「回答のテンプレート」を自分の中で用意しておくと、慌てずに対応できる筈です。


4. ジャッジが回答を行う
いよいよジャッジの本分を発揮する時です。
それがカードの処理についての質問であれば、上で把握した状況に適した回答を行いましょう。
回答の際、『ご質問の状況の場合には、○○なので△△になります。』と、根拠と結論を回答するとよりベターかと思います。
(例:”ダメージステップですので、この効果は発動できません。”、”対象のカードを破壊する処理が行えておりませんので、残りの処理も適用されません。”等々)

また、回答に自信が無ければ、近くのインストラクターやリーダーを呼びましょう。
リーダーを呼ぶ時は一度他のインストラクターに来て貰い、その方にリーダーを呼んで貰うと良いと思います。
(自分が離れてしまうと参加者が不安になったり、勝手にゲームを進行する可能性もあるので、誰か一人は付いている状態をキープしておきましょう)

ジャッジが不安そうに回答すると、参加者から不信感を買ってしまいます。
「自身がある内容は毅然とした態度で、自信が無い場合はすぐに他のジャッジに頼る」と言うのが鉄則です。

カード処理ではなく、トラブルやミス等の罰則が絡む可能性がある質問についても、上記の通りリーダーを呼べば問題ありません。
(罰則の適用を一元管理することで、累積状況等を正確に考慮できる為です)
その場合でも『案内は別のスタッフから差し上げますので、少々お待ち下さい。』等のテンプレートがあると便利です。


5. 状況が解決し、再びゲームが進行する
自分や他のジャッジの回答によってゲームの状態が正常に戻り、試合が再開する事を見届けましょう。
状況によっては、更に次の疑問を生む場合もありますので、少し見届け、問題無く対戦が進んでいれば良いと思います。

受けた質問は是非メモに残しておきましょう。
後述する事例共有だけでなく、インストラクター活動において必ずプラスになります。



試合時間の終了が近付いて来たら


試合終了時間が近付き、対戦を終了した卓が多くなってきた時に求められる動きがあります。

上でも一度書いている「出ている椅子をしまう」「席に戻っていない参加者に座る様に注意する」の他に、「テーブルに置いてある備品(ペン・メモ帳)の状態をチェックする」
「忘れ物が無いかテーブルや椅子の上と下を確認する」様にしましょう。
忘れ物を見つけた場合には、テーブル番号のメモと忘れ物本体を所定の場所に持って行きましょう。

また、未だ対戦が終わっていない卓に注意を払う事も忘れてはなりません。
ただし、その場合でもテーブルから一定の距離を保ち、対戦している参加者にプレッシャーを与えない様に注意して下さい。



試合時間終了


対戦時間終了のアナウンスがあったら、規定に従い引き分けとなったテーブルを回りましょう。
また、スコアシートを未だ提出していないテーブルがあれば速やかに提出する様に促しましょう。

対戦が一通り終了している事を見て回ったら、リーダーに『このエリアの対戦は全て終了しています。』と報告してあげましょう。
リーダーはエリア内の全ての対戦が終わっているか、最後まで注意を払い続けています。
逆にメンバー達がいつまでも見回りを続けていると、リーダーも気が抜けません。
自分の担当エリアの「全ての対戦の終了を確認する事」迄が各チームメンバーの責任です。
それが確認出来たら、おそらくチームの集合場所が決められていると思うので、速やかに移動しましょう。
この「対戦終了の確認と移動」ができるメンバーは、リーダーとして非常に助かります。



試合間のインターバル ~ 次の試合開始


チームメンバー全員が集合場所に戻ってきたら、そのラウンド内で自分が受けた質問を共有しましょう。
この「事例の共有」はジャッジ対応を長期的に行う事を考えた場合、絶対に必要な行動です。
これにより、「大会ではどんな質問が出るか」「自分や他のジャッジの回答が正しかったか」「次に同じ事が起きた時どう対応するか」がジャッジの中で「経験」として蓄積されていきます。
ジャッジ 1 人で対応できる質問には限りがありますが、チーム全体で対応した内容を共有していけば、遥かに早くレベルアップできるのです。
その場で出た質問は全てメモしておくと、今後のジャッジ対応の助けになります。

共有が終われば、水分補給やお手洗い等を適切に挟みましょう。
次の組み合わせ発表~移動・対戦の準備の時間は、(忘れ物の確認以外は)比較的ジャッジの役割は少ないので、うまく活用して下さい。
立ち仕事に慣れていない方も多いと思うので、決して無理も遠慮もせずしっかりと休息は入れましょう。
疲労により途中で駄目になるよりも、休んで元気に長く活躍してくれる方が確実に助かります。
リーダーが忙しいとそれらの指示も出して貰えない場合もありますが、自分で考えて積極的に行動していく能力こそがチームメンバーに求められると言っても過言では無いでしょう。
(休む時はリーダーに一言伝えてから休憩に入りましょう)



イベントが終わった後は


イベント終了後にも行って頂きたい事が 2 点あります。

1 つ目は、イベントを通じて自分やチームメンバー等が対応した質問の確認です。
不安があった質問は「回答の根拠となる様な情報は、Q&A の何処に記載されているか」をしっかりと確認し、今後同様の質問が来た際は素早く答えられる様にしておきましょう。

2 つ目は、イベントのフィードバックをする事です。
現場に立った身として、同イベントの更なる改善に向けて適切なフィードバックを行いましょう。
ポイントは、悪かった点や改善・要望点だけでなく、良かった点・(前回対応したインストラクターについては)改善されていた点も書く様に心掛けましょう。
フィードバックと言うと悪い点を指摘しがちですが、変えて欲しくない部分も正しく評価する方が、インストラクター・KONAMI 双方の為になります。
また、対応中には感じても、イベント中は何かと忙しく忘れてしまう事もあります。
自分が感じた事は、折を見て都度都度メモを残しておく事をオススメします。



終わりに


以上で YCSJ のジャッジにおけるチームメンバーのポイントの説明を終了します。
基本を説明しようとした結果かなり長くなってしまいましたが、私がこれまでの YCSJ を含めたジャッジ対応で学んだ点は極力詰め込んだつもりです。
是非全ての項目に目を通して頂き、YCSJ に留まらず今後のジャッジ対応全てにおいて皆様の活躍の一助となれば幸いです。



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